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Sings Rootin’ Songs / Blossom Dearie

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 ブロッサム・ディアリー (Blossom Dearie)という女性ジャズ・シンガーを知っている人はたくさんいると思うが、この『シングス・ルーティン・ソングス (Sings Rootin’ Songs)』というアルバムを知っている人は意外と少ないのではないだろうか。というのはこのアルバム、アメリカの飲料メーカーがブロッサム・ディアリーにCMソングを依頼したのだが、その歌が評判を呼んだためにケース買いしてくれたお客さんに景品として配るため1963年に作ったレコードなのだ。

 とはいっても、いくらアメリカでも田舎のおじちゃん、おばちゃんまでみんなジャズを聴くわけじゃないし、特に販促品としてタダで配られたレコードなので、聴きもしないで物置の奥に仕舞ったままになったものも多かったであろう。がしかし、このレコードは誰でも口ずさめるようなスタンダードばかりが高いクオリティで収録されてたので、プレミアム付きのコレクターズ・アイテムになってしまった、という珍盤なのである。タイトルの<Rootin’ Songs>は<Routine Songs>とかかっているのだろうか。あの村上春樹さんはこのオリジナル盤を所有していて、雑誌で自慢げに秘蔵の一枚として紹介していたそうである。きっとタモリさんも持ってるだろうな。

 ここまで来ておいて、ブロッサム・ディアリーって誰?って方のために、いつものように簡単に説明しておくと、40年代のニューヨークから活動している人で、ビーバッパーとも遊んでいたような、見た目とチャーミングでラブリーな歌声からは想像出来ないそうな凄い人なのだ。50年代にはパリにも渡り若きミシェル・ルグランなんかとも一緒に仕事をしたりして、50年代中頃にニューヨークに戻りリーダー・アルバムを発売してからは、82歳になる現在までずっと活躍し続けているという、学校で1番人気の音楽の先生のような容貌とは違い、バリバリの<どジャズ>シンガーなのである。実際今でも運が良ければニューヨークのジャズ・クラブで彼女のライヴを観ることが出来る。音楽のジャンルは違うけれども、日本でいえば矢野顕子さんみたいな感じといえば分かりやすいであろうか。特徴的なかわいい声でピアノを弾きながら歌い、腕利きのミュージシャンに囲まれながらやっていた感じとかよく似ている。ちなみに、日本で手に入るブロッサム・ディアリーのCDは全部持っているのは内緒でも何でもない。

 そんな珍盤を世界で初めてCD化したのは日本のDIWレコードというインディー・レーベルで、わたしが持ってるのは今年2008年に大手レコードショップのレーベルがリマスターして再発したものである。簡単に収録曲を邦題で紹介すると、「酒とバラの日々」「想い出のサンフランシスコ」「暑い夏をぶっとばせ」「デサフィナード」「燃える初恋」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」などの名曲ばかりである。恵まれない星の下に生まれ落ちた、こういった珍名盤がわたしは大好きである。これからもメジャー・レーベルから発売されることなく、相当運が良くないとたどり着けないこのブログの拙文に触れた人などに、細々と売れ続けて欲しいと願う、冷え込みが厳しくなった年末であった。

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